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フィンランド・デザイン
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フィンランドの学校教育におけるIT活用の現状

モイ!

マイスオミのラウラです。

フィンランド教育成功の秘密については様々な意見がありますが、その中で議論されているのは教育のIT化です。

フィンランドは、世界で初めて「インターネットのブロードバンド接続を全国民の基本的権利」としており、全国を網羅するインターネットは人口低密度地域の将来の鍵にもなるとされています。

ではフィンランドの「教育」でのIT活用はどうなっているのか。フィンランドの小学校、中学校に当たる学校「Peruskoulu(基礎学校)」の現状を見てみましょう。

フィンランドの学校教育におけるIT活用の現状_a0071240_22060377.jpg


まずは、80年代に戻りましょう。この頃からパソコンが家庭に普及し始め、1985年に学校教育での活用を検討するとのニュースがありました。情報化時代においては若者にその時代に適した教育を提供しなければならないと。

また、パソコンは遊ぶ道具だけではないということを子供たちに教える目的もあったそうです。将来の仕事でも役立つスキル、社会人基礎能力を養う狙いです。

しかし、当時問題になっていたのは、先生方と若者のパソコンスキルのギャップで、つまり教えられる側の能力のほうが高いということです。このブログの最後のほうで少し説明しますが、この問題は現在においても恐らく完全に解消されていないのではないかという気がします。

では、現状はどうなのか。

ヨーロッパ諸国に比較すれば、フィンランドの学校におけるIT化はトップクラスです。


電子黒板の使用、生徒によるパワーポイント発表は一般的ですし、Youtubeの動画など様々なメディアを利用して授業を行うことがありますし、仮想学習環境への宿題の提出など、IT化が進んでいます。


学校の過半数では教育のための仮想学習環境、オンライン教育システムが設けられています。そのネットワークでは教育内容をデジタルに扱うことができ、普段は資料をアップしたり、宿題を提出したり、グループワークの場として利用したりします。


また、ほぼ全ての学校において学校と家庭を結ぶ連絡ネットワークが利用されています。学校からの通知や欠席状況、授業の様子などが確認できます。


フィンランドで教育を受けましたが、小学校に入ったのは90年代半ばで、パソコンを使った授業は定期的に行われていました。中学校と高校教育は21世紀に入ってから受けましたが、電子黒板やインターネットの活用は欠かせなく、妹の年代では宿題の提出や資料の交換がネット上で行われているようです。


しかし、教育におけるIT化は様々な課題に直面しています。最も問題になっているのはITの活用です。台数が確保されていても、ITの導入が進んでも、活用は不十分だとされています。

問題はフィンランドの子供たちがパソコンを使わないということではありません。パソコンやスマホの普及が著しく、例えば我が家ではパソコンとスマホは一人一台、タブレット端末は5人に3台となっています。

問題の原因は先生方がパソコンを積極的に教育に導入していないことであるとされています。


この設備と活用のギャップを生み出すのは、ICT機器を教育でどのように有効に活用すればいいのかが分からない、参考になる活用モデルがない、学習指導スキル研修やワークショップが少ない、デジタルな教育資料が不十分、と様々な原因が挙げられています。


確かにITが自然な形で使われていなければ、教育の邪魔になることもあり得ます。しかし、うまく活用することによって、学力向上が期待できます。というのはICT(IT+「Communication」コミュニケーション)を教科指導に活用している学校の児童生徒の学力が、そうでない児童生徒と比べて向上したことが諸研究で明らかになっています。


従って、先生方のICT活用スキルが問われ、そのための研修が必要となります。


もう一つの問題は費用です。


タブレット端末やスマートフォンが普及しており、若者の生活の欠かせない一部となっていますが、この事実は教育で十分に反映されていないという意見がよく耳にします。


しかし、生徒一人一人に一台のパソコンを購入すればとんでもない費用がかかってしまいます。全国平均は10人に3台で、一人一台パソコン整備はフィンランドの市町村の1割にとどまっています。

費用の問題の解決策として、自分のパソコンを持ち込むことが議論されています。ただ、教育で使われているパソコンが故障すれば責任が誰にあるのか、高い設備を持っている生徒と高いパソコンを持たせない家庭の生徒の間の不平等問題が発生しないのか。この解決策も問題点があります。


教育現場のデジタル化による費用負担は否定できませんし、制度なども導入しなければなりませんが、生徒の学力を向上、パソコンやスマートフォンなどの情報端末の普及が目覚ましい現代社会に適した教育の推進が不可欠だと認識されることが一般的です。


最後になりますが、教育の特徴によって、ICT活用はフィンランドの教育にとても適していると思っています。


なぜかと言いますと、フィンランドの教育では、教師によって提供された情報を「正解」として生徒たちが覚えることは求められていません。先生が提供する情報をあくまでも情報として認識し、それを自分たちで分析し、既に持っている情報を自らが関連づけることが求められています。(このために択一式の試験はなく、ほぼ全て記述式になっています。)フィンランドではこのようなプロセスを経て、教育が行われています。


フィンランド教育におけるIT化の現状、そして今後の課題と展望について説明は以上となりますが、ご意見やご感想、ご質問がありましたら、コメント欄にご記入ください。


by mysuomi | 2014-08-27 10:00 | 文化
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